パリ:ニコル・トットローより <カラー> WATER COLOR RAINBOW LIGHT AND SHADOW |
2022年春夏向け国際素材見本市、プルミエール・ヴィジョン(PV)パリとミラノ・ウニカ(MU)は、オールデジタルとなった。 PVパリは2月15日~19日に開催され、新たなウェブサイトをローンチした。この新サイトは、2021年を通して段階的に形を整え、最終的にはPV傘下のすべての見本市とPVマーケットプレイスを統合する予定という。今回は1,560超のオンラインストアが5万点を超える製品を提案。約110カ国から35,000以上のアクセスがあり、約175,000の製品ページがチェックされ、ページビューは460,000を記録、平均滞在時間は20分超となったと発表している。MUもe-MilanoUnica
Connectに231社が5,900超の製品を掲載。オンラインでビジネスチャンスをサポートし、次回につなげる。いずれもリアルとデジタルの相乗効果で見本市のさらなる充実を図っていく方針という。
コットンの季節 2022年春夏はコットンの季節。ファッションは、暗いムードから離れ、標準的モデルの再解釈から脱却するシーズン。軽やかで明るい陽気な気分が求められ、より大胆で、魅惑的な魅力が顔を覗かせる。 活気に満ちた新しい時代へ向けて、紡ぎ出されるのはエレガントでファンタジーに満ちた新しいストーリー。シルエットはよりソフトでシックに洗練度を増し、セクシーな高揚感がストレートに誇張されたテクスチャーを受け入れる。 素材は快適さと軽さ、サステナビリティが必須要件となってくる。それらすべての欲求を満たすのがコットンである。コットンは100%で、また他の素材と組み合わせられて、テーラードやカジュアル、スポーツアパレルに幅広く用いられる。 触覚と視覚 内向的な時期をくぐり抜け、創造とファンタジー、新しいつながりと発見を求める大胆なファッションの大波が打ち寄せる今シーズン。根底に流れるのは人を魅了したいという欲求である。目に訴えかけたい、手に触れたい、そうした衝動に駆られるように、ファブリックは次の二つのレシピで展開される。一つは触覚的な心地よさをアピールするもの、もう一つは視覚的な美しさを誇示するものである。 触覚は、気持ちの良い快適な触感が差別化のための強い付加価値となる。コットンの軽やかなさらりとした感触や、しなやかで滑らかな手触り、流れるような肉感のあるドレープが浮上する。加えてこれまで以上に強調されるのがジャージー。布帛同等のしっかりとした密度の高いものから流動感に富むものまで様々。軽く透けるレース風のニットも増える。 この“触る”をトレンドとして大きく打ち出しているのがMUである。「リ・タッチ (RE-TOUCH)」をテーマに、原材料に指で触れ、その品質を知り、評価するという行為を優先して修正していくことにスポットを当てる。アートディレクターのステファノ・ファッダ氏は「身体的な接触が厳しく制限され、社会的な距離を保つ時を経て、追求すべき本質的価値は“触覚”にある」とコメントしている。 視覚は、楽しさをポジティブに表現する方向へ向かう。華やかなパーティーからのインスピレーションとデジタルデザインが絶妙にミックスされて、見た目とタッチで差異化をアピールする。注目は遊び心のある軽い透けるテクスチャー、それにラメなどが煌めく素材。光りは時にけばけばしさも辞さないほどの、お祭り気分で見られる。コットンなど植物繊維にも、自然の持つ微妙に不規則な味わいを高めるように輝きがプラスされる。 ファッションは触覚と視覚で創造性と想像力が刺激されて、新たなニューノーマルへアップデートされる。 エコロジーの波 ラグジュアリーブランドはその多くが要求度を強める生活者に急かされるように、より志の高い、エコ・レスポンシブルな経済への転換へ拍車をかけている。ファブリックメーカーも生産チェーンの各段階で従来の手法を入れ替え、原材料の製造から製品のリサイクルまで、また輸送からブティックのデザインまで、あらゆる面で見直しを行っている。それはまるで“革命”のよう。長い間、混乱とは無縁と考えられてきた業界が大揺れに揺れている。 ここで抑えておくべきポイントは次の二つ。 一つは、昨今、加速する循環型経済への取り組みである。重視されるのはリサイクルやアップサイクルで、製品のライフサイクルに変化をもたらし、テクノロジーとの結び付きによってクリエーションを促進する。 自然に還るコットンも、デニムやTシャツなどで古着リサイクルが広がりつつある。コットン/ポリエステル混の分離技術も開発され、廃棄されたコットンをリサイクル・セルロース繊維に応用する技術も登場、循環型経済に貢献するイノベーションとして話題を集めている。 もう一つは、エコ志向がファッションの欲望を満たす領域へ足を踏み入れていること。エコはもう環境意識に訴えるだけではなく、新しい美意識を伴って、ファンタジーを誘うように表現される。ゴールは、生活者の願望を触発するエコファッション、コットンのような天然素材や再生原料を活用した製品を通して憧れをかきたてるサステナブルファッションである。 オレンジとモーヴのデュオ シーズンの開幕を宣言するのは、オレンジとモーヴのデュオ。オレンジは昨冬の赤の影響を受けて、センシュアルな雰囲気を醸し出す暖かい色調。モーヴはデジタルの世界を連想させるソフトなブルーとピンクのハイブリッドカラー。この暖色と寒色、2組みのカラーがエネルギーあふれる今季の魅力を伝える。 とくに光が希求される22春夏に、新しく出現するのがハレーションを起こしているようなカラーや、光輪のようなグラデーションを見せるカラー。またナチュラルな生成りや自然な味わいの淡い色合い、それに温かみのあるニュートラルカラー。加えて生命の躍動を感じさせる瑞々しいグリーンや強烈なオレンジ、ピンク。最後にデジタルの世界で見られるトーン。モーヴやスミレ、ピンクがかった色調がマットなものから光沢のあるものまで、パステルカラーで表現される。 軽く滑らかでしなやか アウトドアやスポーツカジュアル向けコットンは、撥水加工やストレッチなどプロテクト機能が標準装備され、軽量化されるとともに表面が滑らかで、しなやかな風合い。ドレープするギャバジンやツイル、ダイアゴナル。サテンやサテン風も多く、抑えた光沢のコーティングも。またラミネートやメタリックに光るもの、軽くシワづけたものも。 陽光に晒されてソフトに 色が夏の陽光に晒されて色抜きされたかのようにソフトになったファブリックも目立つ。ウォッシュアウトが多用され、染色の工夫によって色が白っぽく退色し明るく変化づけられたり、シワ感や起伏が生み出されたり、味わいのある無地が多くなっている。製品洗いは、スポーツカジュアルからテーラリング、エレガントなドレスにも広がる。 優しいシースルー 肌に優しいシースルーはコットンボイルやシフォン、レノクロスなど、ここ数シーズン、欠かせないものとなっている。透ける色を重ねて活き活きと見せるデザインなど、そのニーズは高まっている。透け感を組み込んだチェックやストライプ、カットジャカードやオパール加工、チュールやメッシュ、繊細なレース、刺繍など。セカンドスキンさながらのニットにも透明感を特徴とするものが見られる。 触ってみたくなるテクスチャー 思わず触ってみたいと思わせる微細な表面感のあるテクスチャー、フワフワとしていて爽やかで、気持ちよさそうな風合いが関心を集めている。涼感たっぷりの軽いシボやポツボツしたフクレ、不規則に細かくうねるシアサッカーやリップル。表面に細かな突起を散らしたツィードも。さらに懐かしいテリークロス。 リファインド・ラスティック コットンを始めとする植物繊維は自然の特質を表現しながらも、素朴さを洗練させている。自然の趣を伝える緻密な構造、スラブ糸などの意匠糸使い、手の込んだファンシーな織りが不規則な凹凸のある表面をつくり出しているが、特徴は何と言っても軽いこと。この軽さが外見上の素朴さに繊細な表情をもたらしている。手触りも乾いたラフな感触から、よりソフトでしなやかなタッチへ変化している。 折り紙風の立体感 折り紙のようなきっちりとしたレリーフ効果のあるジャカードや、ネクタイ柄に見られる明快なマイクロモチーフのドビー織が新しい興味の対象になっている。構築的でありながらもしなやかで、ストレッチ性を増していることもあり、身体の動きに敏捷に反応する。2次元でも立体感のある表現、例えばストライプとダイヤ柄を組み合わせたグラフィック、またジオメトリック・プリントで3D効果を見せるデザインも。 きらめく光 22年春夏は光り輝く太陽のようなシーズン。きらめく光は動きを生み出し、素材に命を吹き込む。きらびやかなゴールドやシルバー、虹色の光沢など、ラグジュアリーな雰囲気で惑わせられるが、成金趣味ではない。ラメも気品のある光。温かい穏やかな光沢のレースや刺繍、プリントにインパクトのあるスパンコール。 ジェンダーレスなシャツ地 ジェンダーレスに新しい感覚を楽しめるシャツ地が増えている。しなやかさを加えて堅苦しさを払拭し、リラックスした無造作な表情を見せるものや、より軽量化して透け感を演出したもの。またナチュラルな素朴さを控えめに表現した細いスラブ糸使い。シアサッカーやクレープ、楊柳、シワ加工も。先染めはチェックよりもすっきりとしたストライプが好まれる傾向。 シンプルで洗練されたデニム シンプルで洗練されたデニムへの流れが強まり、テーラード系ファッションを刷新する。魅惑的なほどしなやかな風合いのものも。エレガントな不規則性、微妙なニュアンスのウォッシュアウト、柔らかな陽光に晒された色合いなど、自然らしさはさりげなく。また端正で正確な織り方の繊細な表面感、深みのあるカラーリングと控えめな光沢。ディテールを正確に研究し尽くした精巧で綿密な提案も。 大胆でオフビートな柄 プリントやジャカードなど柄物は大胆でオフビートなテーマが特徴。シンプルなビジュアルは、意外な配色でグラフィックのインパクトを強めている。リゾートの南の島の思い出や異国への旅の記憶を呼び起こすグラフィカルなパターンも印象的。 花は変形される。従来のコードの縛りを受けない色使いで、幻覚に登場するような不思議な植物を描き出す。化学物質で刺激されたような人工的自然が登場し、曲がりくねった官能的な植物が描かれる。 デジタルが影響力を拡大し、輪郭が曖昧な夢幻の世界へと誘う。それはリアルとデジタルが一つとなった領域。サイケデリックな雰囲気の新カモフラージュ柄やピクセルが作り出す3Dにより塗り替えられた新しい風景柄、色が滲んだモチーフを散らした夢幻的な雰囲気の柄。 |