ファッション情報バックナンバー

 コットン・ファッション情報

*2025年春夏コットン素材傾向*
PREMIÈRE VISION PLURIEL 及び MILANO UNICA より


 パリ:ニコル・トットローより
 
コットン カラー

<RED FASHION>
<GREEN OBSESSION>
<COPPER REFLECTION>



ファブリック ストーリー

 <MICRO MACRO>

 <GIRL-SCOUT>

 <TEX MEX FUSION>

<REBELS WITH A CAUSE> 

 <TROPICAL GLAM>


 2025年春夏向けのパリとミラノのファッションテキスタイル見本市は、ミラノウニカ(MU)が1月30日~2月1日、ミラノフィエラ・ロー見本市会場で開催され、プルミエール・ヴィジョン(PV)パリがパリ・ノール・ヴィルパント見本市会場にて開催された。MUの出展企業は609社で、来場者は会社数で5,886社(11%増)だった。PVパリは前回を上回る125 ヵ国30,340 名が来場し、1,180 社が出展した。

コットンはサステナブルの「要」
 今シーズンのサステナブル素材開発の焦点は「再生」にあり、その中心に位置する素材がコットンである。コットンは大地の再生に貢献する植物繊維であり、既存の製品のアウトレットからのリサイクル素材の活用による土壌保全を促進している。加工工程では、水やエネルギー、化学薬品の使用を最小限に抑えるために低負荷の方法が採用され、最新の開発技術が各素材の特性を活かすために利用されている。
 テキスタイル産業は大きな変革期にあり、化石燃料や集約的農業、規制の不十分な化学プロセスからの調達に代わり、新たな代替的アプローチが取り入れられている。生産と消費のより好循環的なモデルに向けて、鉱床の活用、水やエネルギー効率の高い技術、厳格な化学物質管理、トレーサビリティ・ツールの活用が進められている。
 今シーズンは、完璧さではなく個々の美しさを重視し、自然の素材の特性と技術的な洗練、魅力的なデザインを融合させる方向に向かっている。コットンはサステナブル素材の「要」として、その重要性がますます高まっている。

メインテーマは「ミューテーション」
 環境問題を考慮した新しいアプローチが生まれ、デザイン性や快適さ、性能、耐久性などの基準を守りながらも大きな変化が起きている今シーズン。再定義されていくパラダイムの軸となっているのがメインテーマ、「ミューテーション(突然変異)」である。
 PVトレンドのプロジェクトマネジャー、ルーシー・ジャノー氏は、このテーマにインスピレーションを与えているのは「繭」のモチーフだと述べている。実際、25春夏のクリエイティブな提案には脱皮→さなぎ→繭をイメージさせるものが多くみられる。生地やプリントには、透明性や光、立体感など突然変異的なテクスチャーや奇妙さを持ったデザインが取り入れられ、透け感のある素材は、さなぎを包むような形をしていたりする。トレンドを提案するインスピレーションフォーラムも、「繭」をイメージした近未来的なつくりになっていた。
 25春夏は、時間と共に形になっていく実験、探求、働きかけ、プロジェクトを後押しし、シーズンごとに入れ替わるファッションではなく、長期的視点を育んでいくシーズンである。変容するプロセスの真っ只中で、一瞬止まる季節である。

このテーマでは次の3つのサブテーマが浮上している。

リジェネレーション(再生) 
 自然との関わりから生まれる変化を重視し、自然界の再生を目指す。コットンなど自然素材の選択が、生体系回復への手助けとなる。今シーズン、とくに目立つのが動物界に着目したデザイン。また腐葉土から葉っぱ、海藻から岩まで地層の模様を織り出したジャカードやイカット、イレギュラーなスラブ生地も。
トランスフォーメーション(変化) 
 昆虫の完全変態に見られるような変容に着想し、根本的に新しくなった美しさを表現する。さなぎや脱皮をイメージさせる透明感や半透明感の美しい生地や、繊細で立体的な表現が目立つ刺繍、アップリケなどの装飾。輝く光沢の演出。プリーツ加工やジャカード、ハニカムなど多様な表面効果で。
アダプテーション(順応)  
 新たな均衡を提案し、環境の変化に合わせた素材や技術を追求する。丈夫で実用的なコットンなど、軽くさらりとした肌触りで、温暖化に適応した通気性の良い素材。クラフトマンシップにテクノロジーを取り入れ、素材と職人技の力を損なわずに機械の正確性を生かしたジオメトリックなデザインが提案されている。

キーカラーは「ミルキーイエロー」

 25年春夏のカラーも、「ミューテーション」に焦点を当てている。これは、移り変わり続ける色とクラシックな色を表している。キーカラーは「ミルキーイエロー」で、24/25秋冬の黄土色を漂白したような輝きのある進化した黄色。柔らかく懐かしみのある色合いである。
 これら提案色は、光の強さ、リジェネレーション、ぼやけた釣り合い、変異し続けるクールトーンの4つの軸に基づいている。
 光の軸では、輝きへの欲望や未来を予見する欲求が表現され、白や暖色、自然な色合い、冷たい色合い、単色の輝きが特徴である。リジェネレーション軸では、健康的な色や過度に色づけられた色、エネルギッシュな閃光が強調されている。ぼやけた釣り合いの軸では、曖昧な赤やニュートラルカラー、乳白色のパールシェードなどが見られる。最後のクールトーン軸では、熟成された色調やアースカラー、生物からインスパイアされた色が目新しく映る。
 カラーレンジはビビッドカラーとくすんだ色を組み合わせ、濃淡の表現を強調している。固定観念を打破し、従来の色の用法を変革することを意図した色彩の変化に注目したい。

<コットン素材のポイント>

エアリー&フローティ
 
軽やかで浮遊感のある、風にそよぐような質感が上昇傾向である。ナチュラルな表情のコットンボイルやシフォン、オーガンジー、チュールなど、薄手で柔らかく、空気を含んでいるような軽やかさを感じさせる生地が特徴である。ニットにも注目が集まっている。

活気あるクレープ
 高密度で丸みのある感触のクレープは、動きを感じさせ、クラシックを忘れさせる活気がある素材である。強撚のコットンクレープはストレッチフリーで、リラックスしたシンプルさと洗練されたタッチを兼ね備えている。コットンなど植物繊維使いで、光沢のあるシルキーな質感を持ちつつ、伝統的な贅沢感のある生地も注目されている。

端正なラスティック
 素朴さと端正さ、自然で控えめな生地への需要と、良い見た目に対する一般的な関心に応えるため、コットンの植物繊維ならではの不規則な節や乱れたスラブが、気まぐれで職人風の表現に適している。これにより、魅力的な不完全さが生まれている。

楽しげなツィード
 ツィードは新しい色使いやグラフィックな織りで、アップデートされており、厚手のマットなコットンやひらひらとした細長い布片や飾り、細い輝くリボンや煌めくラメ、多色の小さな毛状突起やらせん状の細い糸使いで、楽しげに踊っているかのようである。

シャイニー・ジャカード
 光るジャカードが広がっており、とくに注目されるのはゴールドで、漂白されたような微妙な色合いに表現されることが多い。虹色はフィルターされ、抑えられる。目を引くのは、パステルカラーに金箔をのせた大きな花柄ジャカードで、生き生きとした花園のようである。また柔らかな見た目のゴールドが幾何学模様を強調しているジャカードも見られる。

変容する装飾デザイン
 刺繍やレースでは素材と質感の変容が強調されており、モチーフは漂白された柔らかな印象を持つものが多い。プリーツやエンボスが新しい皮膚のように広がる。動物界からインスピレーションを受けたデザインでは、爬虫類や昆虫の甲羅、魚の皮などの形態が表現され、職人技も3D技術の影響を受け、工業的な精度を持つ現代的なクラフトが再定義されている。

プレミアム・カジュアル
 耐久性が保証された堅牢なワークウェア生地はギャバジンや強撚サージ、セルビッジデニムなどニートなプレミアム品質が特徴である。リラックスして履けるスラウチーなパンツには80年代調ヴィンテージムードのソフトなコットン。またクリスプな光沢ペーパータッチにアップデートされた高密度軽量ポプリンや綿サテンなども。
 

エレガントなシャツ地
 しなやかさ、心地よさ、軽さが特徴のシャツ地は、女性服の透明性と流動性を受け入れ、リラックスしたエレガントな雰囲気を漂わせている。カントリー風のシックさも抜かりなく、繊細な質感を持つハンカチチェックやシアサッカーなどが多く取り入れられている。また日本調の微妙な色合いを見せる天日干しインディゴ染めシャンブレーも見逃せない。

伝統を破るニット
 アイコニックなカットソーやジャージー、ピケ、リブが、重みを変え珍しい構成を駆使して伝統を打ち破っている。密度の高いフリースやインターロック、極細のジャージーにスラブやドライな麻タッチがクラシックな雰囲気に独自の要素をプラスしている。ジャカードニットは、幾何学的なリズムのオープンワークで心地よいファンタジーを探究している。

新しい視覚表現のプリント
 プリントはますますぼやけ、捉えにくくなり、植物学的なモチーフから幾何学的なものへ移り変わりつつも、常にやや褪色し、わずかに歪んでいる。花や緑のデザインは抽象化され、新しい視覚的イメージで表現されている。花柄は色あせたパステルカラー使いが特徴で、ぼんやりした花びらは水彩画を思わせる。揺れ動く線が繊細に生地上で褪色し、透明な効果を生み出している。手描きされた繊細な花々とエーテル的な抽象的形状が融合し、乳白色の色彩が構図を包み込んでいる。ミニマルなXXLでは、花や植物のプリントがグラフィックなミニマリズムを追求し、アーティスト的なアプローチが見られる。濃い原色が生地全体に広がり、対照的な色を組み合わせたり、色相を変化させて柔らかなグラデーションを作ったりしている。幾何学模様は、幾何学的な精度とかすんだ外観が特徴。チェック模様は生地に溶け込み、他のモチーフはおぼろになり、幻覚的な外観を生み出している。色が微妙に相互作用し、生地上を波立って移動しているかのように見えたりする。





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