プレスリリース

 
2019年7月31日

2020/21年秋冬 ミラノウニカ
コットン素材の傾向


          
 2020/21年秋冬のハイエンドなテキスタイルと服飾付属品の見本市、第29回ミラノウニカ(MU)が、7月9~11日、フィエラミラノ・ローで開催された。出展社数は昨年7月の水準を維持し、総数は608社。MU独自の出展社数は465社で、イタリアを除くヨーロッパからの出展社は93社となり前回比8%増加した。日本からは30社・団体、韓国から20社、併催されたオリジン・パッション&ビリーフズに93社が出展した。
 来場した企業数は6,000社にのぼり、イタリア企業の数は堅調に推移。イタリア以外の各国からの来場社数は、前年同期比2.6%増となり、盛会裡に閉幕した。日程を7月という早期開催に改めて3年目、この試みは成功だったと高評価されている。
 本稿ではMUの概要及び提案されたトレンドを基に、展示場で見られたコットン素材の傾向を解説したい。

デジタルとサステナブルは引き続き重要
 総合テーマは、前回に続き「デジタル・トランスフォーメーション」と「サステナブル・イノベーション」だった。MU会長のエルコレ・ポッド・ポアーラ氏は次のように述べている。
 まず「デジタル・トランスフォーメーション」について。「ピッティ・インマージネとのコラボレーションにより実現したデジタル・マーケットプレイス“e-milanounica”への参加社が、当初の60社から半年後の現在、約2.5倍の153社に増えた。見本市を刺激し補完するツールの正しさが証明され、率直にうれしい。これからもデジタルの利点であるパーソナライゼーションへの取組みに注力していく」。
 次に「サステナブル・イノベーション」では、「サステナブル・プロジェクトへの参加が予想以上に広がった。出品した企業は150社を超えて前回比22%増となり、展示された製品数も1,004点40%増と大幅に増加した。前回に続き、持続可能な統合的経営システムの採用を進めている企業をクローズアップする一方、今回は製品の分類基準に新しいカテゴリーを二つ導入した。一つは時間的な持続性を表現する“エヴァ―グリーン”、もう一つはクリエイティブで革新的な製品を対象とする“ファンシーグリーン”である。今後は伝統的なグリーンの製品だけでなく革新的でクリエイティブな製品にも注意を向けることが重要と考えている。様々な分野でのプレゼンスを強化していく」という。

♦コットンも官能的に
 MUトレンドエリアでは、サステナビリティと連動した大規模かつ魅惑的な展示が行われた。トレンドのメインテーマは「エコロティカ」、つまり「エコロジー+エロティック」の造語である。
 アーティスティック・ディレクターのステファノ・ファッダ氏は、「“エロティック”という言葉は、SNS上で人々を観察する中から生まれた」という。「“LIKE(いいね!)”への欲求から、人に認められたい、評価されたいという気持ちが高まり、自分をさらけ出して見せる形が広まっている。それは自身の官能性(エロティシズム)を触発するとともに、美的表現を導き出す原動力として解釈される」と語っている。
 展開されたのは、自らの姿を見せたい、驚かせたいという力強い美である。提案されたのは次の三つのテーマ、ドラマティックな“エコロティック・ドラマ”、超自然的な“エコロティック・エデン”、シュールな“エコロティック・サーカス”。
 エコなコットンもこれらのトレンドを反映するように官能的な感性あふれる方向へ動いている。それは装飾的で女らしいクチュール感覚を追求する傾向でもある。コットンはもう単にナチュラルな自然素材というだけではない。プラスアルファの価値が求められているのである。コットン差別化へ向けた新たな一歩が始まった。

<注目されたコットン素材のポイント>
◆カラー
 ダークトーンが主調。黒を中心に、ダークブルーや森のグリーンなどダーク系を基調としたカラーコントラストが必須。明るいカラーも暗いシャドーをつけるのが新鮮。
◆光沢や光り
 最高級綿100%使いの滑らかなシャツ地に見られるようなシルキーな光沢から、ゴールドやシ ルバー、コパー(銅)のメタリック加工、きらめくラメ糸使いなど、光りで高級感を演出する手法 が欠かせない。 
◆透け感は不透明とミックス
 透ける素材は厚地の不透明なものと組み合わせて、官能的に見せる。厚地とはいえ、今季も軽量化はマスト。
◆ヤーンはイレギュラー
 様々な意匠糸使いが増えている。不規則な表情を生み出すスラブやネップ、ループ、ブークレ、カスリ糸など。とくにジャカードで目立つのが、カットされた浮き糸のデザイン。フリンジのように長いものも見られる。
◆伝統をアップデート
 従来あるものを“ありそうでないもの” のようにアップデートする。例えば伝統のシャトル織機 使いの織物に縮率の差でシボ感を出したり、セルビッチもやわらかな特殊起毛をかけたり。  先染めシャンブレーもレザー風に見せるなど、さりげない魅力を加える。またベーシックな綿  100%素材もプリーツ加工が可能になっている。ボンディングや計算されたダメージ加工など、 定番にこれまでなかったような変化をつけたものが人気。
◆クラフト(手工芸)タッチ
 技巧をこらしたクラフト(手工芸)タッチへの関心が高まっている。ツィーディな太糸使いや、レースや刺繍風のものなど。中でもデザインキルトやパッチワーク、ニードルパンチといった異素  材組み合わせが注目される。
◆柄は大柄化
 プリントを始め、先染めチェックやストライプなど大柄のものが多くなっている。特に重要なの はジャカードで、柄が大胆に大柄化している。巨大な千鳥格子などのグラフィック、花柄、絞り 染め風、濃淡グラデーションなど。
 (取材/文:一般財団法人日本綿業振興会 ファッション・ディレクター 柳原 美紗子)


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