COTTON TOPICSパックナンバー

【2024 WINTER】


東洋紡せんい

東洋紡グループの繊維総合展で、2つの高品質綿糸を発表。

 東洋紡グループは繊維総合展として、“環境のためにやるべきこと〈eco〉”と、“自分のためにやりたいこと〈ego〉”の両方により良いモノづくりを目指した展示会『~環境にええコト・自分にええコト~eeコト(ええコト)展』を大阪・東京の2会場で開催。さまざまな繊維を扱うことで培ってきた高度な技術を応用して開発された革新的な紡績糸や高機能素材が多数展示された。
 

「さいくるこっと™」
  SDGsのために開発された高品質リサイクル綿糸

 繊維・アパレル業界は、生産から販売、廃棄に至るまで地球環境に与える負荷が大きいと指摘されており、早急な対策が課題となっている。なかでも製品を作る際に出るゴミ問題は深刻で、裁断クズに関しては、裁断効率を高めてロスを減らしたとしても、原反の2割程度は廃棄となるのが現状だ。「綿花という貴重な原料と大切な水を使って作るものだから、ゴミにしてはいけない。」そんな思いから東洋紡せんいは、パートナー企業であるインド最大手紡績会社と連携を行い、従来とは異なる開繊方法を導入して高品質リサイクル綿糸「さいくるこっと™」を開発した。  
 一般的に行われている反毛では開繊の際に繊維にかかるダメージが大きく、断裂した繊維でリサイクル綿糸を作るため、クオリティが損なわれたり、細番手がひけない、混率を上げられないなどのデメリットが発生する。そこで、東洋紡せんいは細かく裁断した生地や糸を空気の力を借りて一本一本の繊維に分離していく開繊方法を導入することで、リサイクル綿(わた)のクオリティを高めることに成功。20%リサイクル混や80番手までの紡績も可能なほどの高品位な綿糸の紡績を実現した。さらに、糸になる工程で不純物や綿かすを取り除くため見た目も美しく、手触りもスムーズな生地が製造できる。  
 原料には自社や取引先の製造工程で発生するクズ糸、生機や加工生地の裁断クズを使用。しっかりとロット管理された良質なリサイクル原料のみを使用するため、さまざまな紡績方法に対応でき、生地表面、風合い共に高級感がある仕上がりとなっている。また正しくリサイクルが実施された製品であることを証明する国際リサイクル認証『GRS(グローバル リサイクルド スタンダード)』の取得も可能。品質とエコを両立し、SDGsの達成にも貢献できる。  
 マテリアル事業部 原糸販売グループの大島 享氏は「今後は加工生地の裁断くずのリサイクルを推進するため、縫製工場を持つアパレル企業と連携していきたいと思います。リサイクル綿糸は世界でも数社しか製造していませんし高品質と言えるものは『さいくるこっと™』しか現状ありません。東洋紡せんいはこの分野でのトップランナーを目指します。」と今後の展望を語った。

「プライムコット™」
  美しさと柔らかさを併せ持ち、崇高感のある風合いのある新感覚綿糸

 
紡績方法で機能性を付与する技術とノウハウを長年培ってきた東洋紡。そんな東洋紡独自のテクノロジーとパートナー企業の最新設備、厳選した幅広い原料背景の3つによって誕生したのが高品質綿糸「プライムコット™」だ。  
 原料は、パートナー企業であるインド最大手紡績会社が取り扱う幅広い原料商材の中から超長綿を中心に厳選。東洋紡の独自製法とパートナー企業の新鋭紡績機を活用し、内部に空気を多く含む糸構造で柔らかくふっくらとした風合いを、表面の毛羽を抑えることで美しい光沢を実現した。また、油脂分を多く含む超長綿・長綿を使用しているため、原綿由来のしっとりとした風合いもあり、繰り返し洗濯しても風合いが持続する。  
 さらに発色性も良く、杢調表現も可能。細番手が引けるため、糸ムラの極めて少ない美しい薄手の生地を作ることもでき、高級感のあるカジュアル素材として多彩な活用が期待される。  
 プライムコット™の裁断クズを使用すれば、さいくるこっと™と組み合わせて『GRS認証のプライムコット™』を作ることもできるため、要望に応じて対応していくとのこと。今後も他社との連携を強め、東洋紡グループが目指す〈eco〉と〈ego〉の両方により良いモノづくりの実現を目指す。

   問い合わせ先: 東洋紡せんい株式会社
             マテリアル事業部 原糸販売グループ
                    電話:06-7638-6988 
                    E-MAIL:toru_oshima@toyobo-tex.co.jp
                    https://www.toyobo-tex.co.jp
 


「第60回全国ファッションデザインコンテスト」開催

日本綿業振興会賞は、卢 珏(ル・ジュエ)さん(中国・浙江理科大学)が受賞

 「第60回全国ファッションデザインコンテスト」(主催:学校法人 杉野学園/一般財団法人 ドレスメーカー服飾教育振興会・後援:文部科学省/東京都)の最終審査及び発表会が、2023年10月14日(土)に東京のSUGINOホールで開催された。  
 今年度の作品制作の部の応募総数は1681点。第1次審査を通過した28点から実物制作出品した26点がショー形式の最終審査会に臨んだ。厳選な審査の結果、文部科学大臣賞をはじめとする各賞が決定し、企業・関連団体賞のひとつである日本綿業振興会賞に、中国の浙江理科大学の卢 珏(ル・ジュエ)さんの作品が選ばれた。  
 受賞作の作品テーマは「文字青年」。ベージュ色ニットのロングセーターとインディゴデニムのパンツ、白いロングシャツのコーディネイトで、ユニセックスなシルエットに仕上がっている。とりわけ目を引くのがセーターにデザインされた『狂人日記』の文字だ。『狂人日記』は、1918年に発表された魯迅の短編小説のタイトルで、悪しき旧文化を批判する衝撃的な内容と革新的な文体は当時の学生たちから圧倒的な支持を受け、社会の注目を浴びた。  
 当会のファッションディレクターで審査員を務めた柳原美紗子も最初にこの『狂人日記』の文字柄に興味を持ったとのこと。柳原は「今回は普段着として、着用できる作品を選びたく思っておりました。こうしたコンテストは、とかく現実離れした不思議なデザインや、コンテスト映えを意識したドリーミーな作品が多くなりがちです。そんな作品と比べ、ル・ジュエさんの作品は既視感のある、ありふれた感じの服に見えるかもしれません。しかしル・ジュエさんの作品は、いわゆる普通の服ではありませんでした。」と語る。その言葉通り、数多くの作品の中でもル・ジュエさんの作品は圧倒的な存在感を放つとともに、プリントではなく編み込みでデザインした文字柄や、サステナブルを意識し、コットンデニムの端切れを使ってパッチワーク風にデザインしたパンツなどディテールにまでこだわった作品に仕上がっていた。  
 ル・ジュエさんによれば中国でもレトロブームが起こっているらしい。そんな時代背景を受け、今回の作品には、戦前の中華民国時代の新聞記事をデザインに取り入れたとのこと。さらに現在、中国ではまったりとした若者が多いらしく、ル・ジュエさんの作品は古いものの中に新しさを感じる若者たちに向け、戦前の革新的で前衛的なパワーをメッセージとして発信しているように感じた。  
 今後の夢は「卒業後は大学院へ進学し、いずれは日本へ行きたい」とのこと。ル・ジュエさんの活躍が日本のファッション業界に新たな風を吹き込んでくれることを期待したい。

 問い合わせ先: 学校法人 杉野学園「全国ファッションデザインコンテスト」実行委員会
            電話:03-3491-8151

            https://www.sugino.ac.jp/gakuen/project/contest/2023