COTTON DAY 2020

「5月10日は、コットンの日」

COTTON DAY 2020



 
 「コットンの日」2020オンライン・イベントを開催

 世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、毎年5月10日に行っていた「コットンの日」イベントを、今年は10月23日10:00~13:30にアメリカとの2元中継を交えてオンライン開催しました。
 今回の「コットンの日」のテーマは、「変化を導く、新しい世界のパートナー」。アメリカ綿花業界が「日本の皆様と一緒になって、明るい未来を築いてゆきたい」との願いを込めて実施されました。参加者は405名で、個人参加はもとより、会議室でグループ視聴する会社も見られました。
 オンラインによる初めての試みとなる「COTTON DAY」2020は、ウェブサイト上にロビーが用意され、アメリカ綿業界による展示コーナーをはじめ、アメリカ綿の最新情報やサステナビリティについてのさまざまなセミナーや基調講演が行われました。さらに「アメリカ綿花輸出業者との交流コーナー」と「日本のCOTTON USA 認定サプライヤーとの交流コーナー」など、各社による商談コーナーも開かれ、来場者との交流の場が設けられました。


 



リッキー・クラーク国際綿花評議会会長よりご挨拶

 

 コットンの日イベントにようこそ。米国の綿花産業の大切な長年のパートナーである皆様とお目にかかる機会を持てたことは大きな喜びです。
 新型コロナウイルス感染症の大流行により、世界の繊維事業とサプライチェーンは劇的な変化を被りました。その結果、我々もそれに合わせて一緒に変わらなければなりません。このコットンデーも初めてバーチャルでの開催となりました。コロナ禍で業界全体が大きな打撃を受けている今、CCIは、できるかぎり皆様のお手伝いをしたいと思っています。ビジネスの再構築に役立つと思われる貴重な情報をお届けしますので、ぜひお楽しみください。


「世界の綿花市況の見通しについて」 
ハンク・ライクリー国際綿花評議会理事長が講演


 
 今年は非常に困難な年でした。 COVID-19は、世界経済を大きく停止させ、世界の綿花産業に深刻な影響を及ぼしており、今後もその影響は続きます。
  2020綿花年度のアメリカ綿の生産量は、1,700万俵と見込まれ、2019年より290万俵減少となります。最新のレポートでは、アメリカ農務省(USDA)はアメリカの生産量の予想をわずかに下げました。南西部では干ばつにもかかわらず、生産量はわずか2%減少にとどまると見込まれています。減少の大部分は南東部と中南部と予測されており、今シーズンの作付面積
 アメリカ綿のバランスシートでは、COVID-19に関しての不確定要素を考えると、需要側に多くの不確実性があります。 USDAは、2020綿花年度の国内消費を250万俵と予測していますが、これはコロナ前の約300万俵を下回っています。輸出も1,460万俵に減少となっています。需要は少ないものの、生産も少ないので、期末在庫は10万俵減の720万俵と大きく変化しないと予想されています。
 輸出はアメリカ綿のバランスシートでは極めて重要です。 2020綿花年度の現在の販売コミットメントは870万俵です。大きなパンデミックによって引き起こされた前年度からの300万俵の持ち越しのためです。中国はこの数ヶ月間で最大の輸入国であり、現時点で全輸出コミットメントの38%を占める330万俵です。
 しかし中国とのさまざまな貿易問題を鑑み、2020年と2021年に綿を含むアメリカの農産品の輸入を増やすというフェーズI合意を踏まえ、今後は特に注目したいと思います。
 一方、世界的には綿花の需要は回復傾向にありますが、COVID-19以前のレベルには戻っていません。
 USDAは、3月から5月の世界のミル消費見込みを大幅に削減し、2019綿花年度の消費量を当初の1億2,600万俵から2,400万俵減の1億200万俵に引き下げました。
 USDAによると2020綿花年度のミル消費は、1億1,400万俵に回復するとしています。 2020綿花年度の世界の綿花生産量は4.5%減少、アメリカとブラジルで最大の減少が見込まれます。
  USDAの1億110万俵の予測は、期末在庫として過去最高ではないものの、2014年度の記録的な水準に非常に近いレベルです。1億俵を超える期末在庫という状況は過去にもありましたが、今回は異なります。 2013年と2014年には、在庫の大半を中国が保有していました。現在、中国は在庫をより合理的なレベルに減らし、中国以外の在庫が増加しています。 2018年から2019年にかけて、中国以外の在庫は2,000万俵増加し、インドで最大の増加です。アメリカに次ぐ第2位と第3位の輸出国であるインドとブラジルは、中国以外で最も高い水準の在庫を持っています。


「U.S.コットン・トラスト・プロトコルについて」
ゲイリー・アダムス全米綿花評議会プレジデントが講演



 
2025年までのサステナビリティの目標値達成に向けて
 サプライチェーンに対する監視の目が厳しさを増し、透明性を求める声が一層強まっています。アメリカ綿花業界は、2015年までの35年間に大幅な環境負荷削減を実施してきました。さらに高いレベルを目指し、2025年に向けて主要なサステナビリティ指標の目標値を設定し、継続的な改善と目標達成を検証するための「U.S.コットン・トラスト・プロトコル」を策定しました。
 これは責任ある綿花栽培のための新たなシステムであり、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に則したサステナビリティ5分野に関する年次データを提供します。対前年比データによって、アパレルブランドや小売業者はサステナビリティ公約の達成度をより数値化しやすくなります。

【35年間の環境負荷軽減の実績】
 
(上記左から)土地利用31%削減、土壌侵食44%削減、水使用82%削減 エネルギー使用38%削減、温室効果ガス排出30%削減
*出典: Field to Market. 2016. Environmental and Socioeconomic Indicators Report (『環境・社会経済指標報告書』). 引用元: www.fieldtomarket.org.

【継続的改善のために設けた2025年全米目標】
 
(上記左から)土地利用13%削減、土壌侵食50%削減、水使用18%削減、 土壌炭素30%増加、温室効果ガス排出39%削減

責任ある生産を、具体的で透明性の高い形で証明
 プロトコルに参加した農家は、土壌管理や水資源、労働環境など9つの分野で120の項目に回答し、サステナブル指標のデータ入力を行います。チェックリストによって自己評価を行うとともに、Field to Market®が提供するサステナビリティの主要指標を定量的に測定できるデータツール「フィールドプリント・プラットフォーム」でデータ共有します。
 入力されたデータは、第三者機関のコントロール・ユニオン・サーティフィケーションズ(CUC)によって検証され、メンバー限定のホームページ上で公開されます。プロトコルに加盟した世界中のアパレルと小売はこのデータを閲覧し、サステナビリティ報告書やESG監査などに使用することができます。  

U.S.コットン・トラスト・プロトコル綿
 このように生産された綿花は、U.S.コットン・トラスト・プロトコル綿と呼ばれます。今年がプログラム導入初年度のため生産量は多くはありませんが、2025年までに全アメリカ綿生産量の約半分を目指します。

テキスタイル・エクスチェンジの推奨繊維・素材リストにも登録
 U.S.コットン・トラスト・プロトコルは、テキスタイル・エクスチェンジの素材切替指標プログラムの一環として、170以上の参加アパレルブランド・小売業者が選ぶことのできる36の繊維・素材の一つとなっています。  

透明性の高い組織構成
 これらの取り組みを運営するためU.S.コットン・トラスト・プロトコルという団体が作られました。トラスト・プロトコルのプログラムは、複数の利害関係者で構成される理事会によって運営されます。そのメンバーは、アパレルブランドや小売業者、市民社会(例:世界自然保護基金やザ・ネイチャー・コンサーバンシー)、外部のサステナビリティ専門家、および栽培農家、繰り綿業者、綿花商、卸売業者、協同組合、紡績会社、綿実取扱業者を含む綿花業界の代表など、複数の利害関係者で構成される理事会の監督下に置かれ中立性が保たれています。

環境負荷への貢献度が可視化される仕組みを設立
 生産されたU.S.コットン・トラスト・プロトコル綿は、1kgごとに1電子クレジットが付与され、ITプラットフォーム上にあるU.S.コットン・トラスト・プロトコル銀行に開設された農家の口座に預託されます。預託されたクレジットは、アパレルや小売によって引き出されるまで銀行に残ります。
 アメリカ綿には、1俵ごとにPBI(追跡番号)が付けられ、クレジットに紐づけられているので、追跡可能性も確保しています。アパレルや小売は、トラスト・プロトコル綿を1kg購入するごとに1電子クレジットを獲得でき、クレジットの数により環境負荷への貢献度として可視化される仕組みです。  メンバーに加入することで、サステナビリティにおけるさまざまな情報が得られます。会費や入会方法など、さらに詳しい情報は、 https://trustuscotton.org/ をご覧ください。


「COTTON USA SOLUTIONS™」について
ブルース・アサリー国際綿花評議会専務理事が講演


  2020年のコットンデーにようこそ。私は、アメリカ綿の中心地メンフィスからバーチャル空間で日本のイベントに参加しています。コットンデーが皆様にとって有益な体験であり続けることを願っています。プログラムの中から何か新しいことを学んでいただき、我々が皆さんのビジネスを支援し、利益アップに貢献したいと思っています。  
 CCIでは、10月から紡績メーカーのビジネスを、ワンランク上の成功へと導くために開発された、 新たなコンサルティングサービス「COTTON USA SOLUTIONS™」を開始します。収益性、生産性の向上と最新技術をお望みなら、ぜひこのプログラムをご検討ください。CCIの世界中の紡績専門家で構成されるチームが、5つのビジネス構築プログラムを開発し、50カ国以上1500を超える紡績工場との取り組みから培った、グローバルな視点を持った卓越した専門技術や知識を提供します。このサービスは、COTTON USAライセンシーには無料で、対面でもオンラインでも提供可能です。

プログラム1「紡績調査」
 工場効率の向上に役立つ確かなデータを提供する紡績調査を利用して、業績を向上させます。一連の調査は、第三者機関による厳正な管理下での工場テストに基づいており、一例では、混綿方法などリング紡績の生産性を8%以上向上させた新たな紡績手順を紹介しています。  
 調査事項は、プロセスの各段階における綿の種類別の技術的・経済的メリットから、染着性、繊維品質の影響まで、広範囲にわたっています。科学的調査を実施する世界で唯一の機関である COTTON USAが特別に調査結果を提供します。

プログラム2「紡績交流プログラム」
 紡績工場幹部の方たちが、COTTON USAライセンシーの優秀紡績工場を施設見学し、世界中の主要な紡績工場のリーダーと意見交換を行える機会を提供します。これに参加することで、綿糸製造、調達や生産など、効率性の向上と競争力の強化につながるベストプラクティスを共有することができます。新たなベンチャー事業に向け協力関係を築く絶好の機会です。

プログラム3「技術セミナー」
 COTTON USAの技術コンサルティング専門家チームが、アメリカ綿の購入、使用及び最適化の方法を教えます。主な項目は、 紡績、処理、購入手法、一貫した品質の維持管理などに関するベストプラクティスなどです。セミナーを活用してアメリカ綿使用の技術的メリットを認識し、紡績の最新技術に触れてください。
 技術チームのほかにも、主な講師として設備担当者、経済専門家、綿花商など、サプライチェーンの様々な分野の専門家が含まれていますので、効率性と生産性の向上につながる最新の情報を得ることができます。

プログラム4「紡績マスターコース」
 紡績の専門家が紡績マスターになるためのコースです。紡績技能をさらに上のレベルに向上させることが目的です。全員の経験年数を合わせると200年以上になるCOTTON USA SOLUTIONS™技術コンサルティングチームが主導します。この学習コースは、全く新たなレベルの知識を習得する好機となります。

プログラム5「紡績コンサルティング」
 10%~25%のコスト削減ができる革新的な技術を紹介する、無料のコンサルタントプログラムです。個別対応の紡績コンサルティングでは、各紡績工場のニーズに合わせて、最適な紡績専門家1名を担当に割り当てます。オンラインや工場の現場で、1~4日間の日程で紡績工場の綿密な調査を実施します。

 プログラムの詳細は、https://cottonusa.org/ja/solutionsをご覧ください。


 基調講演  「危機時の指導者、サステナビリティ、コロナ後の小売業」
                ウォルマート社の元CEO マイク・デューク氏


 世界最大の小売業者で民間企業でもあるウォルマート社の元CEOのマイク・デューク氏が、「危機時の指導者、サステナビリティ、コロナ後の小売業について」をテーマに基調講演しました。

成功するリーダーの特長とは  

 リーダーシップにおいて3つの重要な要件があります。1つ目は「誠実さと信頼」です。誠実さがなければ信頼されず、信頼されなければ、どんなに才能があっても努力家でも相手にされません。誠実さとは、常に自身で透明性を保ち、相手とコミュニケーションを完全にとることから始まります。もしリーダーが間違った考えを持てば、部下たちはすぐさま読み取ります。毎日正しいことを自動的にすることで誠実さは培われていきます。

 2つ目は、人を思いやる心を持つことです。リーダーは、まわりの人に心を配り、そこから人に投資し、人を育て、チームワークに目を向けなくてはいけません。人への思いやりを優先したリーダーは、おもしろいほど結果を出します。リーダーシップは傲り高ぶって行うのではなく、謙虚さを持つべきです。“人に尽くすリーダーに尽くしたい”と人は思います。このようなリーダーが成功するのです。

 3つ目は、リーダーとして作り出す組織全体の卓越性の文化と環境です。ウォルマートでは卓越性への研鑽と呼んでいました。一生懸命働くのはもちろん、与えられた役割の中でベストを尽くすことを指します。

 これらのことは目新しいことではありません。しかし危機の時に大きな力となります。すべての要件は日常の中で育まれ、一夜にして生み出されるものではないからです。
 ビジネスが順調に進む時は、誠実さを育み、人を思いやり、人を育て、文化を醸成します。しかしひとたび危機に瀕した時に、何年もかけて蓄積した力が大きな力となって活用できるのです。

 危機は弱さをあぶりだします。危機に遭遇した際、リーダーは自分のリーダーシップスキルを活用し、組織の評価をする機会ととらえてください。きっとリーダーシップの領域において組織全体の水準を上げるために何ができるか考える好機となるでしょう。

●サステナブルな取り組みを長きにわたり展開

 サステナビリティは、ウォルマートで重要であり続ける概念です。2005年に発生したハリケーン「カトリーナ」の災害復興への取り組みを機に、当時のCEOが、3つの持続可能性目標を提示しました。1つ目の目標は、事業から発生するごみをゼロにすること。2つ目は再生可能エネルギーの利用を100%にすること、3つ目は顧客と市場にサステナブルな製品を提供することです。  

 これらの目標設定から15年経て、ウォルマート店舗から出た廃棄物は90%削減されました。包装を簡素化し、効率化を高め、リサイクルを推進した結果です。しかしながら私たちは目標のいずれも100%達成しておらず、引き続き取り組み続けなければならないと思います。

●実店舗からeコマースへの移行とカジュアル化の流れ

 私は全キャリアを小売業と顧客とのかかわりに捧げてきました。その知識と経験に基づき今後について少しお話ししてみましょう。
 コロナ禍で小売業は、実店舗からeコマースへの移行が加速しました。店舗で物理的に顧客にサービスを提供できるのはよいことですが、それでもeコマースのトレンドは今後も続くでしょう。  

 次の傾向としては、モールの衰退です。世界のすべての国に該当するわけではありませんが、多くの先進国でモールへの客足が減少しています。顧客は以前のように大きな地域のモールで1日を過ごすのではなく、他の買い物方法を探しています。

 さらに注目すべきは、人々の服装がカジュアル化しつつあることです。よりカジュアルでスポーツ用を選ぶ人が増え、スーツやドレスの需要が減ります。

 顧客についてのトレンドに目を向けると、コロナ禍においても価値だけではなく、品質も求めています。これまで以上に購買方法の利便性と安全性に重点を置き、製品の品質と価値は妥協せず、革新を進めることが大切になります。これは小売業者の将来を変えると思います。

【プロフィール】

 1970年にウォルマートが上場して以来、4人目のCEOとして活躍。景気後退の厳しい時代を乗り切り、就任初年度に純利益27%を上げた。電子商取引の重点化やハイテク人材への本格投資、国外拠点の拡大、持続可能性におけるリーダーシップの推進役も果たした。CEOとして会社を成長させただけではなく、企業としての誠実さも成長させた。2003年には米経済誌「フォーブス」の「世界で最も影響力のある人物」10位にも選ばれた。  







アメリカ綿花輸出業者との交流コーナーでは、カルコットや東洋綿花、豊島など15社がブース参加し、来場者との活発なオンライン・ミーティングが開かれました。
 


日本の COTTON USA 認定サプライヤーの大和紡績、桑村繊維、丸久、シキボウの4社が、新規取引先を求めて初のオンライン交流コーナーに参加しました。


 アメリカ綿関連団体のコットン展示ホール
「U.S. コットン・トラスト・プロトコル」、「COTTON USA SOLUTIONS™」、「コットン・インコーポレイテッド」、「SUPIMA」、「ORITAIN」の展示コーナーがオープンしました。


U.S.コットン・トラスト・プロトコル展示ブース