長引く新型コロナウイルス感染症の影響を受け、今年も「コットンの日」イベントを、5月10日13:00~15:00にオンラインで開催しました。 今回の「コットンの日」のテーマは、「COTTON USA: Your Partner for Prosperity(繁栄のためのあなたのパートナー)」。アメリカ綿花業界の明るい未来を、日本の皆様と一緒に築いてゆきたいとの願いを込めて実施されました。参加者は335名で、個人参加はもとより、グループ視聴する会社も見られました。 当日は、アメリカ綿の最新情報やU.S.コットン・トラスト・プロコトル、COTTON USA SOLUTIONS® などの紹介や、サステナビリティ特別講演などさまざまなセミナーが行われ、有意義な一日となりました。 |
カルロス・ガルシア 国際綿花評議会 会長よりご挨拶 |
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皆様、こんにちは。国際綿花評議会会長のカルロス・ガルシアです。CCIを代表して、「Cotton Day Japan 2022」に、皆様をお迎えできることを大変嬉しく思っております。 今年はどんな一年だったでしょうか。昨年のコットンデー以降、私たちの業界はCOVID-19パンデミックの影響から抜け出し、サプライチェーンに沿った課題に取り組み続けています。 アメリカ綿花業界は、過去数年間、そして現在、さらに将来にわたって、より回復力があり、持続可能で豊かなビジネスを共に構築していくために、皆様のパートナーシップに大変感謝しています。強い絆を築き、育てていくためには、個人的な関わり合いに代わるものはありません。来年、再び直接お会いできることを願いましょう。 皆様のご健康とご発展を心よりお祈り申し上げるとともに、本プログラムが皆様にとって有益なものとなることを願っております。 |
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「アメリカ綿花業界の最新情報」 ブルース・アサリー 国際綿花評議会 専務理事が講演 |
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新たにラウンドモジュールラップの規格化を決定 現在、各国の紡績工場でコンタミネーション問題を抱えています。その主な原因は、プラスチック製のラウンドモジュールラップによるものです。ラウンドモジュールとは、機械で綿花を摘み取り、圧縮しラップして自動的に畑に落とした塊のことで、高度な技術で生産効率とコスト削減を促進するために導入されています。 通常、綿花は収穫後、2週間から6週間畑で保管した後、綿繰り工場に運ばれます。その間雨の被害を防ぎ、ハリケーンなどで簡単に穴が開いたり破れたりしないよう、丈夫なラップで覆い保管する必要がありますが、今まではその一部が破損して綿花に紛れ込むことがありました。 そこでアメリカ綿花業界は、米国農務省の研究者と協力して、初のラウンドモジュールラップの新しい規格を開発しました。強度、厚み、引き裂き強度などの要素について規格化したのです。こうした試みはコンタミネーション低減につながり、アメリカ綿花業界にとって大きな前進になります。もちろん従来から綿繰り工場では、たとえラップが破れていても、それをすべて取り除くことに全力を注いでいます。 自動検知装置で検知しやすいパントンブルーの綿俵包装導入 もう一つのコンタミの原因として挙げられるのが綿俵の包装です。綿俵包装の素材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、コットンの3種類があります。ポリプロピレン製織布は破損しやすく、白色の梱包材の繊維が綿に入り込んでしまうと除去するのが困難になります。 このほどアメリカ綿花業界の合同ベール包装委員会は、自動検知装置で検知しやすいパントンブルーの綿俵包装を承認しました。2021年には全体の約20%が変換し、2022年度中には80%近くがブルーバッグになると予測しています。 アメリカ綿花業界は、コンタミネーション低減問題について継続的な改善と向上心を持って取り組んでいることをご理解ください。 サステナブルな綿花栽培の継続的な改善を推進 アメリカ綿花業界は、長年にわたりサステナブルな綿花生産を続けています。過去35年間に大幅な環境負荷削減を実施し、土地利用効率の改善49%、土壌侵食の削減37%、水使用量の削減79%、エネルギー使用の削減54%、温室効果ガス削減40%を達成しました。 さらに2025年に向けて土壌炭素を加えた6つのサステナビリティ指標について具体的目標値を設定し、その達成度を検証するために2020年秋に「U.S.コットン・トラスト・プロトコル」をスタートしました。トラスト・プロトコルは、サステナビリティ指標の継続的な改善を図るために、その進捗状況を裏付け立証します。 発足以来、すでにプログラムに賛同する600社を超えるアパレルブランド・小売業者、紡績、メーカーをメンバーとして迎え、拡大し続けています。この中には、J.Crew、Madewell、Levi Strauss & Co.、Gap Inc.に加え、グローバルなアパレルメーカーGildanなども含まれています。 U.S.コットン・トラスト・プロコトルは、プログラムに参加する農家が、土壌管理や 水資源、労働環境など9つの分野で 120項目の質問票に回答するとともに、綿花栽培におけるデータを入力します。 そのデータはField to Market®が 提供するサステナビリティの主要指標を定量的に測定できるデータツールで共有され、外部の第三者機関のコントロール·ユニオンによって検証されます。年度ごとの検証済のサステナビリティ数値を受け取れるのは、U.S.コットン·トラスト ·プロトコルだけの大きな特長です。加盟するアパレルブランドと小売業者は、自社が使用するコットンが、よりサステナブルな方法で栽培されていることの確証を得ることができます。 さらにこのプログラムは、国連のSDGsに沿っており、テキスタイルエクスチェンジとフォーラム・フォー・ザ・フューチャーに認められています。またサステナブル・アパレル連合、2025サステナブル・コットン・チャレンジ、Cotton 2040、およびCotton Upのイニシアチブにも参加しています。さらに、ITCスタンダードマップに認められ掲載されています。この2年間で大きな成果を上げ、世界のサステナビリティ・コミュニティに組み込まれました。 サプライチェーン全体の透明性を確保 U.S.コットン・トラスト・プロコトルは、サプライチェーン全体の透明性を高めるために香港を拠点に世界6カ国で展開している企業TextileGenesis™(テキスタイル・ジェネシス)と提携しています。 TextileGenesis™のプラットフォームは、ブロックチェーン技術を利用することにより各サプライチェーン段階での製品レベルでの取引追跡を可能にします。これにより、従来にないサプライチェーンの透明性と、サプライチェーン全体におけるサステナブルなアメリカ綿繊維の取引を追跡・検証できる確実なソリューションを確保できます。この結果、参加アパレルブランド及び小売りは、自社製品の生産サプライチェーン・マップを受け取ることができます。 CCIは、「紡績工場の収益性を高めること」を目標としたコンサルティングサービス「COTTON USA SOLUTIONS™」を提供しています。6か国9人から構成される専門家チームが、「紡績調査」、「技術セミナー」、「紡績交流プログラム」、「紡績コンサルティング」、「紡績マスターコース」からなる5つのビジネス構築プログラムを開発。50カ国以上1,500 社を超える紡績工場との取り組みで培った専門技術や知識を、グローバルな視点で提供します。 このうち核となるのは対面またはオンラインの個別対応で行われる「紡績コンサルティング」です。工場に出向き様子を観察し、収益性改善に向けた重点分野を特定するためのお手伝いをします。昨年は世界の116の工場で実施し、訪問後に行った調査では100%のお客様がフォローアップ訪問を希望されました。 U.S. Cotton Trust Protocol®のメンバーまたは COTTON USA™のライセンシーであれば、プログラムを無料でご利用いただけます。今までにない方法で、皆様の事業構築のお手伝いをしますので、ぜひご検討ください。 |
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「世界の綿花市況の見通しについて」 全米綿花評議会 経済・政策担当 副社長 ジョディ・キャンピ-チー氏が講演 |
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物流の混乱による出荷の遅れ アメリカ農務省が4月に発表した需給見通しをもとに綿花市場を予測しました。綿花価格は過去10年間で最高値に達し、投入コストも大幅に上昇。これは世界経済の予想以上の回復により世界的に需要が増加しているためです。一方で長引くパンデミックの余波により、輸送コストから労働力の確保まで、サプライチェーン全体にかつてないほどのストレスと混乱が生じています。 そんな中、アメリカの需要状況をみると、販売は好調なものの出荷は5年平均のペースに大きく遅れを取っています。2021年綿花年度(2021年8月1日~2022年7月31日)は物流の混乱により、7月31日までにどれだけの綿花が出荷されるか不確定な状態です アメリカ綿の供給は引き続きタイト 全米綿花評議会では、2021年綿花年度のアメリカの輸出を1,380万俵と予想していますが、これを達成するためには週平均36万5千俵の出荷が必要となり、これは5年平均のペースを上回る値となります。 輸出量が1,380万俵とすると、2021綿花年度の期末在庫は435万俵に増加します。一般的に在庫の増加は価格低下につながりますが、2022綿花年度の当初に成約済み綿花が出荷されたため、価格への影響は緩和されると考えています。 アメリカの作付面積は増加 綿花価格は、上昇を続けています。アメリカ綿のタイトな需給バランス、サプライチェーンの混乱、投機資金、穀物相場の高騰、そして強い需要が綿花価格に強気な市場心理をもたらしています。これを受けて全米綿花評議会では、今年の作付面積は前年比約9%増の1200エーカーと見込んでいます。 作付面積の増加は供給増加につながらない 最新の干ばつモニターマップをみると、ほとんどの綿花地帯で1年前よりも乾燥しており、テキサス州では2022年放棄率が平均より高くなるかもしれません。テキサス州最大の綿花生産地・ラボック地域では、200日間ほとんど雨が降っていません。4月12日現在、テキサス州の49%が干ばつに見舞われており、昨年5月もひどい干ばつ状態でしたが、その後十分な雨が降り、2021年産への懸念は薄らぎました。 テキサス州の干ばつが改善されず、栽培を途中であきらめる放棄率が増えた場合には、生産量は1,490万俵まで減少すると予想されます。 世界の需給 世界の生産量は作付面積の増加で2022綿花年度に増加すると予測されています。中国を除くほとんどのコットン生産国が生産増加するといわれています。世界の紡績使用量も1億2,600万俵に増加すると予測され、需要は過去最高になります。そのため2022年の期末在庫は8,000万俵に減少する見込みです。 需要面では、綿花価格の高騰、世界経済活動の鈍化、政治的顕著の高まりで需要が減退し、2022年の価格に高圧力がかかる可能性があります。 |
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「Z世代の価値観と消費行動を探る」 株式会社FinT 代表取締役 大槻 祐依氏 |
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Z世代にとってSDGsは必然の環境 Z世代とは、1996年〜2012年に生まれた世代を指します。生まれた時からインターネットサービスが存在していた「デジタルネイティブ」と呼ばれ、環境や平等社会に関する問題が常に身近にあり、社会課題への貢献意欲が高いことが大きな特徴として挙げられます。 また、商品やサービスの機能ではなく、それらを消費することにより生まれる社会的貢献的側面を重視して購買する「イミ消費」の傾向を強くもっています。80年代まではブランドバッグや高級車などみんなが憧れるブランドやものが存在し、それを買うということがステータスとなっていた「モノ消費」が中心でしたが、90年代後半からは景気も低迷し、インターネットの台頭からシェアする文化も生まれ、体験を重視した消費が重視されるようになりました。 「イミ消費」のキーワードには、SDGsと関連性の高い「環境保全」「地域貢献」「フェアネス(正義)」「歴史文化の継承」などが挙げられ、Z世代をターゲットとする場合には社会的「イミ」を持たせることが大切です。 見せかけだけのSDGsは見抜かれる Z世代はSDGsを義務教育で学んでおり、当たり前の環境にあります。他の世代と比べて、環境に配慮していること、リサイクルしやすいことなどを重視する傾向にあります。 Z世代が消費の中心となっていくことで、アパレルブランドがどうSDGsに取り組むべきなのか。声高にSDGsを唱えるだけでは失敗します。実態が伴わず、SDGsに取り組んでいるように見せかける行為を「SDGsウォッシュ」と呼び、信頼を損ねる要因となります。SDGsネイティブのZ世代に、見せかけだけのSDGsは見抜かれてしまいます。本質的なSDGsへの取り組みを行っていくことが重要です。その過程でプラス面を増やし、マイナス面を減らしていく努力をしっかり外部に伝えていく姿勢も必要です。単発的ではなく、持続可能な施策、企業ならではの施策であること、人権や各国の価値観・文化を認識することが大切になります。 |
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「温室効果ガス排出を探るクライメートジャーニー(気候の旅)」 サウス・ポール農業バリューチェーン コンサルタント メリンダ・ショウ氏 気候変動対策を支援するアドバイザリー企業「サウス・ポール社」 サウス・ポールは、2006年にスイスで設立された気候ソリューションプロバイダーです。世界中の企業や公共部門と協力して気候変動への影響を軽減するための活動を行っています。サステナビリティ戦略の策定などの戦略的アドバイスから、気候変動プロジェクトの開発やファンドの運用など、さまざまな分野でサービスを提供しています。 対策の第一歩は温室効果ガス排出を知ること 気候変動に対処するために、繊維企業は何をすればよいのでしょうか。サウス・ポールでは、クライメートジャーニー「気候の旅」と呼ばれるサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を測定することから始めます。どの部分で排出量の削減策を行うのが相応しいかを判断。企業は該当箇所で目標数値を設定し、戦略を立てることが可能となります。最も重要なのは、戦略を実行し調達方法の変更やフットプリントを削減するための行動を起こすことです。自社バリューチェーン外の気候変動対策に投資などで資金を提供することも重要です。そして進捗状況を定期的にステークホルダーに伝え、自分たちが何をしているのか、何を達成しているのかについて透明性を確保することが大切です。 排出量削減の課題をサプライチェーン全体で共有 繊維業界の場合、二酸化炭素排出量の約70%は繊維製品の上流サプライチェーン、原材料生産で発生します。ブランドはサプライヤーに働きかけ、より低い環境負荷を実証できる生産者を優先するよう、調達方法を変えつつあります。排出量削減の責任は、サプライチェーン全体で共有されています。排出量を算出した後、野心的な気候変動目標を設定することで、排出量削減のための明確な戦略を立てることができます。WWFやCDPなど既存のイニシアチブと連携することは、確かな目標を設定するための枠組みを提供するために非常に重要です。これにより企業が誤解を招くような目標を設定しても、簡単にグリーンウォッシュと見なされることを避けることができます。 二酸化炭素の排出源を探り、ターゲットにする 二酸化炭素排出量削減のため、科学的根拠に基づく目標=「SBTi」を立てる企業が増えてきています。目標達成のためには、まず自社のサプライチェーンの中で二酸化炭素の排出源を探り、ターゲットにすることです。どこが排出源になっているかだけではなく、排出源を減らすために何ができるかを考えます。サウス・ポールはお客様と一緒に、二酸化炭素の排出源を探り、対策をご提案するお手伝いをいたします。 |
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「環境負荷においても高評価のアメリカ綿」 国際綿花評議会 特別顧問 ロジャー・ギルマーティン氏が講演 |
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アメリカ綿は競合綿花と比較して基本的にロスが少ない CCIでは、毎年関心の高いテーマについて外部コンサルタントに調査を依頼しています。2017年にはバングラデシュの工場にて、アメリカ綿・インド綿・ウズベスキタン綿を比較調査。翌年もバングラデシュの別工場にて、アメリカ綿・ブラジル綿・カメルーン綿をさらに調査しました。アメリカ綿は競合と比較して基本的にロスが少なく、歩留まりが高いことがわかりました。製造工程での生産性や糸、生地、衣服の品質もアメリカ綿が優れていました。1ポンド当たりの最終コストは、アメリカ綿を使用した衣料品が他の綿を使用した場合よりも大幅に低くなっています。両結果より性能及び財政面で優れていることが証明されました。 「ライフサイクル分析」による環境負荷調査を追加 さらに、環境への影響について調べるため、新たなコンサルタント会社に依頼。ISOに準拠した「ライフサイクル分析」を実施しました。「ライフサイクル分析」とは、環境に与える影響を製品のライフサイクルを通して評価するために用いる手法で、「何を見るのか」「どんなデータが必要か」「データ分析」「データ解釈」の4段階からなります。最も重要なのは「データの解釈」です。通常は栽培段階を中心に分析しますが、今回の調査ではお客様に届くまでの全製造工程に着目し、栽培に関するライフサイクル分析については過去に発表されたデータを報告書に盛り込みました。 性能・コスト・環境負荷の面で「win・win・win」の高評価 コンサルタントによる分析は、6つの重要なパラメータ(地球温暖化係数(GWP)、オゾン層破壊係数(ODP)、光化学オゾン生成(POCP 夏霧)、淡水生態系への影響、酸性化係数、富栄養化)について、プロファイルを作成します。調査の一部をご紹介すると、3種類の綿花の承認された1,000着の衣服のカーボンフットプリントを調べると、アメリカ綿コットンはブラジル綿に比べて18%少なく、カメルーン綿はアメリカ綿に比べて26%多くカーボンフットプリントが作成されていることがわかります。 次に「地球温暖化係数」「オゾン層破壊係数」「光化学オゾン生成」についての調査によると、アメリカ綿は競合綿よりはるかに優れたパフォーマンスを示しました。これら調査で、比較対象よりもアメリカ綿の環境負荷が少なかったことが数値として表され、環境面でも大きく優位性を示すことができました。 今回の調査で、アメリカ綿は性能面・コスト面・環境負荷への対応のすべてにおいて競合綿より高評価となり、お客様にとって「win・win・win」の状況を作り出すことができると考えます。 詳しい内容につきましては、国際綿花評議会(CCI)https://cottonusa.org/ U.S.コットン・トラスト・プロトコル https://trustuscotton.org/をご覧ください |